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あそびをせんとや ~あそびっこ~

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本を読んだり、舞台を観たり、後は何をしようかな?実は虫好き。変なもの好き。

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マンガで描かれた詩

 もう何年も前、ネットで見つけた1編の詩は、やまだ紫の「砂袋」という詩。 

   わたしは お母さんだから
   素直に言えないこともある

   雨が幾日もさあさあと降るから
   こんな毎日でも子供らは
   陽気にとびまわるから

   淋しくなるから
   あのさ

   抱いてよ

   砂袋みたいにさ
   抱いていてよ


 その時はやまだ紫がどんな人か知らないまま、とても惹かれて私の好きな詩のひとつに加えた。その後も作者について何か調べてみようという気もなく、そのままに年々も過ごしてきたけれど、それがまたひょんなことで彼女の名前を目にしたのだ。やまだ紫は1948年生まれの漫画家。1970年代、雑誌「ガロ」での活躍の後、詩人やエッセイストとしても高い評価を受けていたという。2009年5月に急逝。代表作は、マンガ『性悪猫』『しんきらり』、詩画集『樹のうえで猫がみている』など。

 「砂袋」は、『樹のうえで猫がみている』に収められていた。そして、『性悪猫』の中の「梅雨」にも、母猫のつぶやきとして描かれている。雨の降る物憂い午後、飼い主にまとわりつく母猫の気持ちとして。

   わたしは
   おかあさんであるから
   素直に
   言えないことも
   あるよ…

   雨が 幾日も
   さあさあと降るから

   こんな毎日でも
   子供らは陽気に
   とんでまわるから

   さみしくなるから

   あのさ

   仔猫みたいに
   抱いてよ

   砂袋みたいに
   抱いていてよ


 私は猫でないけど、猫を飼ったことがないけど、痛いほど気持ちが伝わってくる。詩としてやはり好きだ。そして絵が加わることで、挿絵じゃなくてマンガが加わることで、行間にもっと深く入っていけるような気がする。「山吹」にはこんな詩もある。略したところが特に好きなんだ。気になる人は本を見て。

   わたしはね
   子を産むとき
   「母親のわたし」も
   一緒に産んだよ

   子を育てつ
   「母親のわたし」も
   育てるよ

   これが
   なまなかな
   ことでないから

   子が愛しいか
   どうなんだか
   見極めている
   ひまがない

   (略)

   うまれたての
   わたしらの見るものは
   あれも これも
   おどろきで
   やがて美しい

   ほら
   山吹が咲いて
   すごいじゃないか
   あの黄色



性悪猫 (やまだ紫選集)

やまだ 紫 / 小学館クリエイティブ

樹のうえで猫がみている

やまだ 紫 / 思潮社


 
by wkikyoko | 2012-05-11 22:18 | 読書(その他)